


略歴
1958年東京生まれ。日本大学文理学部物理学科卒業後、二葉調理師専門学校を経て、青山の地中海料理「ココパームス」勤務後、渡伊。ウンブリア、トスカーナ、サルデーニャの各地で地方色豊かなイタリア料理に触れ、中でもペルージャにある「リストランテ デル・ソーレ」のオーナー夫妻とは家族同様の存在となるような運命的な出会いをする。
1991年つくばに「リストランテ キッコ・ドゥーバ」を設立。ペルージャの姉妹店として現在に至る。
はじめに
私とこのレストランを語るのに、私が経験してきたイタリア生活をお話しするのが一番伝わるかと思います。 ちょっと長いですがお付き合いいただければ幸いです。
イタリアでの “リストランテ デル ソーレ”との出会い
ウンブリア州ペルージャの老舗“リストランテ デル ソーレ”のオーナー夫妻(オルフェオ&マルチェッラ)とは本当に出会うべくして出会った深い縁を感じております。
もしも何の伝もなくただ一人の見知らぬ日本人男性が目の前に現れて『どうしても本物のイタリア料理を身につけたいのです!』と言ってきたら・・・。(これが逆の立場だったらどうだったのだろう?などと今振り返ると様々な思いが浮かんできます。)
でも、何故か不思議とお互い初めてあった気がせず、そのとき妙に気心が知れた安心感さえ覚えた気がします。
こうして確かなるイタリア料理への道が開かれました。
自分の居場所を見つけてからは無我夢中ですべてを吸収しようと、躍起になって過ごす毎日でした。
その姿を見てより真剣に受け止めてくれたのでしょうか、しばらくして自宅に居候までさせてくれたのです。
朝早くオルフェオと一緒に市場に行っては野菜や果物、肉や魚介類など様々な食材を見ては仕入れ、その帰りはいつもどおりクリームたっぷりの甘〜いコルネット/パンと美味しいカプチーノの朝食。
さあ、今日もがんばるぞ!という気持ちが湧き上がってくるひとときでした。
オーナー夫妻が教えてくれたこと
オーナー夫妻が一番大事なことだと常に教え込んでくれたことは『腕をつけるにはひたむきな努力と意欲、そしていつも感性を磨こうとする気持ちも大切だが、料理人として一番欠けてはならないのが本物の味覚、素材の味を理解する人並み以上の敏感な舌を持つこと…
それにはありとあらゆる食材を口にして、感覚として自分の身体の一部にしてしまうこと、とにかく覚えなさい、磨きをかけなさい』ということでした。
幸いイタリアに渡るその前にシンガポールやフランス、イギリス等を歩いて“食”に関しての興味も幅もかなり広がりつつあったところでしたから、その言葉にはとても感銘を受けよりいっそう見る視点が変わったのです。
さすがイタリアのレストラン(当たり前のことですが…)本場の食材にはこと欠かず前菜からメイン料理、デザートに至るまでメニューの中にある料理はもとより、それ以外のマンマの知りうる郷土料理、はたまた休日にはペルージャ郊外に住む親友の(ブルーノ&リタ夫妻)の家庭にまで頻繁に連れて行ってくれては数多くの家庭料理までも見せて、触れさせてくれました。
ブルーノが裏山でベッカーチャ(ヤマシギ)を獲ってくるとマンマたち女性陣が羽をむしり処理をしてシンプルに塩とコショウでグリル、また自家製手打ちパスタや色々な前菜までたくさんの家庭料理が食卓にのぼります。
これらがどれもこれもみな美味しい。 食前酒から始まり、ワインや食後酒まで時間をかけて飲みながら、イタリアのマンマたちが作る愛情たっぷりの食事とともに子供から大人たちまでワイワイガヤガヤ話は尽きず、お腹も心もいっぱいになることはこういうことなんだという“食の楽しみ方”までも教えてもらいました。
豊かなイタリアに包まれて・・・
季節には、農家の人が売りに来たカゴいっぱいの新鮮な朝採りそら豆の房をむいては生のまま口に放り込んで食べては、採れたては甘みがあって美味しいことを知り、また秋には肉厚のポルチーニ茸をグリルして山ほど食させてもらいました。
ウンブリア州は海がなく山に囲まれているため、仔牛や仔羊、鶏、イノシシetcなど肉料理が多く、なかには専門の職人さんがじっくり何時間もかけて作りあげる“ポルケッタ”というワイルドな豚の丸焼きの郷土料理もあります。観光地にはこれを素朴なパンに挟んで食べさせる屋台などもたくさんあり“食”に関する面白さは本当に興味が尽きません。
クリスマスから年末年始にかけての過ごし方は日本と逆でクリスマスは大切な家族を中心に食卓を囲み静かに時を送りますが、新しい年の幕開けは時報とともにそこら中で花火や爆竹が鳴り響き町中大騒ぎ。
特設ステージが造られ生のバンドが夜通し音楽を奏でたり、あちこちで歌ったり踊ったりのパフォーマンスの数々。またパレードの渦に入ってしまったら最後、抜け出すのがやっとです。
遠くの町が見渡せる城壁の端に佇むと町の中心や山の麓でもまるで花畑のように丸い大きな花火が幾つも打ち上げられ、賑やかな様子が手に取るようにわかるほど。年明けの心躍るひとときです。
これらはほんの一部ですが、このように季節ごと様々な場面で料理に携わり、本当に両手に溢れるほどの経験をさせてもらいながら過ごしてまいりました。
私が思うイタリア料理
イタリア料理というとカロリーが高く、肉料理等のイメージもあるようですが、実際はスローフードの原点とも言われるほど。素材の味を生かしながらも美味しく、身体にも良く、どこか懐かしいマンマの味わい。スポーツ選手たちは試合前にパスタを食べて持久力を補ったり、オリーブオイルを使うため健康的なダイエットにも使われます。肉料理を食べればそのぶん、倍の野菜を食べてバランスを保ちますし、沿岸部に行けば魚料理も豊富です。素朴ながらもきちんと手をかけ、理にかなっているのがイタリア料理なのです。
つくばにキッコ・ドゥーバ-葡萄の実-をオープン
1991年つくばに念願のレストランをオープンし、この地に移店した今日は姉妹店としてよりいっそう深い愛情を注いでもらっています。これからもその思いを少しでも皆様にお伝えしながら“本場のイタリア料理と食の楽しみ”を味わっていただけるよう精進して参りたいと思います。
常陽新聞「つくば発ベンチャー100社 社長たちの人生劇場」もご覧ください。 |